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2019-07

ふつうの私、ふつうな私@WONDER

改めて残念な事なのだが、私は俗物である。
多少知識を得たところで、高潔な人柄にはなれないし、わかりやすいカタルシスに酔ってしまう。

だからこの話に「感動」してしまう。
陳腐なこんな言葉しか出てこない。



主人公、オーガストは顔の骨に奇形があり、人から避けられる顔貌である。
特に下顎の障害が重かったため噛み合わせも非常に悪く、食べこぼさずに食事をすることはできないし、チップスを砕いてスプーンで食べたりすることもある。
だから言語だって療育をしてやっと人にわかる発音にまでたどり着いたのだし、聴覚だって万全ではない。
手術を繰り返したし、見た目で避けられる事も多かったので就学年齢になっても学校に行かず、自宅学習をしていた。
そんなオーガストだが、ついに5年生(この話の舞台においては中学校に上がる学年)から学校に通うことになる。

最初はもちろん上手くいかないことだらけだ。
けれど1年間学校に通ううちに彼は…



小説としては、正直言って非常に面白い。
章ごとにオーガスト、オーガストの姉、オーガストの友達、と視点が変わっていくので、登場人物への見方も重層的になる。
オーガストを上手く受け入れられない周囲が悪者になりすぎず、厚みのある物語になっている。


けれど、読み終わった後ふと思うのだ。
この本の帯には「オーガストはふつうの男の子。ただし、顔以外は。」とある。

もしオーガストが本当に顔以外普通だったら。
オーガストは受け入れてもらえなかったのではないか?と。
「顔以外ふつうの子」と「顔もそれ以外も普通の子」だったらみんな後者を友達に選ぶだろう。
大きなマイナス要因があり、ほかは普通の子は総合すれば「普通よりだいぶ嫌な子」になってしまう。
「顔以外むちゃくちゃ優秀」だからこそ、オーガストは受け入れられたのだ。


なんせオーガスト、「入退院を繰り返しつつの自宅学習」だったというのに、私立一貫校の入学審査に合格。
その学校で一番難しい選択授業をとり、しかも入学した一年目に成績優秀者として表彰されている。
おまけに自分の顔を自虐ネタにしちゃうコミュニケーション能力の高さ。
もちろん対人関係の経験が圧倒的に少ないので、それゆえの失敗もあるのだが、オーガストは一貫してジョークの上手い少年として描かれている。
ジョークが上手くて、学校行ったことないのに成績優秀者。
顔の事で周囲がヒソヒソしても学校に通い続ける強い意志の持ち主。

ちっとも「普通」なんかじゃない。
「むちゃくちゃ優秀」だ。





結局のところ、私も平凡な俗物だ。
「ハンデを持つ人が他の部分で才能に恵まれ、ハンデを克服し最後には周囲に祝福され、イジメてたやつらは罰を受ける」話には感動してしまう。
分かりやすいカタルシスに酔ってしまう。


頑張っている人を応援したいと思うのは悪い事じゃない。
ハンデを乗り越えた人は素直にすごいと思う。

だけど、心のどこかに疼きがある。
もしオーガストがハンデによる周囲の好奇の目に押しつぶされそうになって、僻みっぽくなっていたとしたら。
私は憐れみではなく友人として手を差し伸べる事なんてできるのだろうか?
「ハンデがあるけどすごい人」に感心してるだけの自分。

もし私がオーガストのようなハンデを持っていたとしたら。
自虐ネタになどできないだろう。
いや、それ以前に学校に通う決心ができないだろう。


「自分じゃない誰かが、自分にはできない偉業を成し遂げてる!」


それに感動しているだけの自分。
分かっていたけど、知っていたけど。

私、カッコ悪い。




けれど、オーガストは最後まで「自分は顔以外ふつう」だという自己認識のままでいる。
「ふつう」の人は何十回もの手術に耐えなくてもご飯を食べられるし、顔を自虐ネタにしなくてもクラスメートに話しかけることができるのに。
オーガストは「普通の顔の人生」を体験していない。
だからたとえ彼の道が一般的には茨の道であったとしても、目の前のこの道がオーガストにとっての「ふつうの道」なんだ。


この本は一応児童文学なのだが、大人が読んだ方がよりズッシリ来るかもしれない。
「ふつう」ってなんだろう?
自分は「ふつう」だろうか?

そして、「ふつう」でないと感じた人に勝手にヒーローであることを期待していないだろうか?
「ふつう」でない部分のある人が「ふつう」の人のようにその事に悩んでいた時、手を差し伸べられるだろうか?



今夜はカッコ悪い自分とキッチリ向き合おうと思う。
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