FC2ブログ

2019-06

プレシャス

日比谷シャンテシネで見た映画。
救いのないストーリーの中にある希望、まぁこのテーマ自体最近増えてるんだけど、でも、それでも、マンネリとは私は思わない。

この映画のヒロインはアメリカのハーレムに住む黒人少女、16歳、ピザ。
母親に虐待され、実父の子を2回妊娠し、一人目の子はダウン症で母親が嫌がったため一緒に暮らせない。
一家は生活保護で暮らし、教育を受けること、努力することそのものに否定的な母親。
そしてヒロイン、プレシャスも学校は留年し、それでも学年相当の学力が身に付かず、さらには2度目の妊娠を理由に退学を宣告されてフリースクールに転校する。
フリースクール入学時に受けた学力テスト「GED」は2.8というスコアで、年齢相当(高校入学許可レベル)は8と言うから、相当だ。
イメージ的には小学校2~3年レベルの学力だと思う。
なんせ「Day」が読めなかったんだから。
正直、一般的な育ちの日本人に実感を持つことが難しい環境だろう、私を含め。
プレシャスはそんな環境でも、学ぶことを諦めなかった。
教師や級友の助けがあったとはいえ、そのパワーはすごい。
その「諦めなかった」ことがプレシャスの世界を変えたのだと思う。

プレシャスは虐待を受けている時、スターになった夢を見る。
それをプレシャスも「普通の」あこがれがあるのだ、という解釈をする映画評があったんだが、私はそうは思えず。
エンターテイメントとして「華のある」場面を挿入した、以上の意味を感じてしまう。
なまじ精神医学もかじっているもんだから、この「夢想」を「虐待からの逃避」、乖離性障害一歩手前に見てしまう。
その精神病寸前の危うさがリアルさでもあるわけなんだが。

プレシャスは「クラスで発言したことのない」落ちこぼれだった。
でも、そこから変わっていく。
フリースクールでは「とにかく書きなさい」と言われ、文法も単語もめちゃくちゃでも書いて、表現して、議論して、それがプレシャスを変える。
そして変わってきた矢先に迎える出産、父親失踪。
出産後母親の虐待は悪化し、子のためにもとプレシャスは家を出る。
そしてその全面的バックアップをフリースクールの教師がする。
その教師の家でプレシャスが見たものは、教師がレズビアンだったという事実。
事情があったのは生徒だけではなかった。
レズビアンを差別する母親の言動がさんざんあったのに、先生を受け入れるプレシャス。
これも「教育」が彼女を変えたのだと思う。

そして母子施設に入ったプレシャスのもとに母親が父親の訃報を持ってくる。
父親はエイズで死んだ、と。
感染を危惧し「病院に行った方が」と母親に言うプレシャス。
「アナスセックスしてないから大丈夫」と疑いもしない母親。
ここにも「教育」の差がリアルに出ていて、悲しいような複雑な気持ちになる。
いくら1990年前後とはいえ、その頃にはもうエイズがゲイだけの病気でないことはわかっていた(だからプレシャスは検査に行ったわけだし、級友が垂直感染を心配する描写もある)
それを知って行動できたプレシャス、疑うことすらできなかった母親。
この差の悲しさはレイプや実父の子を2人妊娠、というショッキングな「不幸」より身近で、同情ではない共感があった。

結局プレシャスのHIV検査は陽性。
学校で声をあげて泣くプレシャス。
それでも、学校をやめない。
死ぬことよりも授乳禁止が悔しいと言う。
その強さは、私にはないもので。
圧倒された。

そして最後の場面。
福祉事務所でソーシャルワーカーとプレシャスと母親が向き合う場面。
プレシャスの生まれ月すら覚えていない母親。
虐待を容認し、虐待に加わり、それでも心に傷を抱え、「私を誰が愛してくれるの?」と泣く。
その言い分はどこまでも自己中心的で、プレシャスへの愛情なんてものは感じ取れなくて。
それなのに、最後には取り上げたプレシャスの第一子をプレシャスに返す。
一方プレシャスも母親に共感はしない。
「私は頑張って学力をあげた、高校に大学に行くんだ」
「(母親が)辛い思いをしたのはわかった、今までわからなかった私は馬鹿だ、もう会わない」
そう言って子ども2人を抱いて部屋を出て行く。

まだ17かそこらでもプレシャスはしっかり母親になっていた。
母親を理解したうえで切り離す、大人の判断もできるほど成熟していた。
その変化は希望。
余命が長くないのがわかっていても。
この映画には泣かなかったけど、でも感動しなかったわけではなくて。
引き込まれ圧倒され、泣くのを忘れていた感じ。
すごくクオリティの高い作品だと思う。


あ、有名歌手が出てるらしいよ、この映画。
私歌手の外見なんて全然わかんないから知らないけど。
そもそも洋画もハリポタ炎のゴブレット以来だしw
ヒロインのプレシャスはこれがデビューらしいよ。
そういう背景はさっぱりわからなくても入り込めるから大丈夫。
これは本当にいい作品だ。
関連記事
スポンサーサイト

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://kutibakareha.blog117.fc2.com/tb.php/310-84681a77
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

虞美人 «  | BLOG TOP |  » 激情(全国ツアー

プロフィール

朽葉

Author:朽葉
このページの管理者、朽葉。
とにかく生のステージが好き。
お笑いメインに、芝居、宝塚と西へ東へ。

朽葉姐さんとコンタクトを取りたい方はツイッターID「renrenren12」へ。
http://kutibakareha.blog117.fc2.com/blog-entry-479.htmlのみ、BBS目的にコメント欄公開中。

最近の記事

カテゴリー

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード

最近のトラックバック