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2019-07

SIDE SHOW

実在する美女のシャム双生児をヒロインに据えた物語。
華やかな成功を夢見るデイジー(樹里ちゃん)、穏やかな家庭を夢見るヴァイオレット(かしちゃん)。
役者の力もあって、二人は双子なのに別人、まったく別の人格を持つ、体はつながっているのに。
二人は見世物小屋で暮らし、その歌の才能を見いだされて小屋を出る。
そして歌手としての成功と恋人を手に入れたと思ったのに、夢をかなえるその直前ではしごを外される。
シャム双生児だから、夢をかなえるチャンスを与えられた。
シャム双生児だから、夢はかなう直前で壊れた。
だけれど、二人はこれまでもこれからもシャム双生児。
チャンスがきた理由も、夢を壊された理由も、「シャム双生児だから」。
ラストシーンで二人には映画の話が来る。
タイトルは「フリークス」、日本語で「化け物たち」。
その瞬間特にデイジーがなんとも言えない表情をする。
そして次の瞬間、二人とも強いまなざしに変わる。
いいことも、悪いことも、全て原因は同じ。
だから、二人はシャム双生児であることを肯定する。
顔をあげて、強く客席をにらみつける。
「私を見なさい」と強く強く語りかけてくる。

作品の根っこにあるのは、持って生まれたものからは逃れられないというむごい現実。
そう望んで産まれたわけでなくても、そのせいでどれだけ苦しんでも、なにかを恨んでも。
だから前を向いて、全てを受け入れて歩いて行くしかない。
それができなければその先には発狂か自殺しか道がないから。
救いのない人生を、自分が選んだわけでもない苦難を、それでも肯定して生きて行く、生きて行かなけりゃならない。

それはどこまでも救いのない話で、だけど大なり小なり誰もが抱えている現実で。
ありとあらゆる「痛み」や「傷」は作品になっているけれど、「持って生まれたものからは逃れられない」という痛みは一番共有しやすいのじゃないだろうか。
親兄弟との関係、病気や障害を含めた心身の状態、人種、性別、国籍、宗教、家業、家柄、貧困、容姿、性格。
その全てに満足し感謝している人間なんて、きっといない。
だからこそ、この作品は共感しやすいと思う。

そして、この二人はエンジェルじゃない。
「人と違っているからって否定しないで」と叫んだのに、同じ口でオブラートに包んでだけど「黒人は恋愛対象にできない」と言ってしまう。
これが現実。
差別されたから差別しない聖人になれるわけじゃない。
いや、むしろ差別されたからこそ差別するんじゃないかとすら思う。
二人は白人のシャム双生児。
シャム双生児であることで差別されればされるほど「白人」であることにはプライドを持たなきゃバランスとれないんじゃないだろうか。
心の底から「差別しないで!」と叫んでいるのに自分が差別してしまう、弱さ。
それが悲しいほどリアル。

だけど、だからこそ、見終わった後には言葉にしがたいパワーをもらえる。
痛みを肯定し、弱さを責めないでくれるこの作品だから。

私は私の研究と職業柄「見世物小屋の中なら安全、幸せ」と「外の広い世界が見たい」という掛け合いには考えさせられるものがあった。
「安全な代わりいろいろ制限された狭い世界」と「自由な代わり守ってもらえない危険もある世界」、ハンディを持つ人にとってその選択はとても深い意味を持つ。
この選択は2010年の日本でもリアルタイムで直面するテーマ。
そして今も正解が私にもわからないテーマ。
だけど、この二人は外に出て正解だったんじゃないか、とそれは理由のない確信が持てる。
何年も学んでも考えても答えが出ないなら、きっと、それは「生きたいように生きるのが正解」なんだろうから。


作品のクオリティはここ最近でみた2つの宝塚とは段違いでw
まぁ役者も相当できる人揃ってるからねえ…
脚本の出来も相当違うけど。
樹里ちゃんもかしちゃんも芝居はできる人だし、他のキャストも豪華。
岡さんは私がミスサイゴンで一番印象残った(筧さんに会いに行ったはずなのに…)人だし。
大澄賢也があんなになんでもできる人だとは知らなかったがw(歌える、踊れる、ハッタリ系だけど芝居が出来る)
後はラダメス、じゃなかった伊礼君と元四季の下村さんがメインキャスト(当然歌も踊りもバッチリ)
ジュビリーの掃除夫の牧勢海ちゃんが何気にアンサンブルにいたりね。
楽曲もいいから大人数で歌うシーンの盛り上がりは最高。
迫力充分。

そして衣装が素晴らしいんだ、また。
ヒロインの双子の衣装がどれも超ステキ。
見世物小屋の楽屋で着てる素朴なワンピース、ショーシーンで着てる豪華なドレス、歌手になってからのプライベートで着てるツーピース、最後のウェディングドレス、どれもそれぞれいい。
一番を決めるなら…楽屋で着てる素朴なワンピだな。
次が「愛のトンネル」ってシーンで着てるグリーンのツーピース。
あの時代(1930年代)のトレンドを取り入れてるらしいんだけど、ジャズエイジより好きかも?

衣装と歌の素晴らしさのおかげもあって、見終わった後残るのは絶望ではなく希望。
パンドラの箱の底に残る希望でしかないけれど。
だからこそ、きっとその希望はなくしてはならないんだと思う。
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