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2019-10

それぞれの向き合い方@咲く

下北のお芝居再び。
前に「チョコチップクッキー」という芝居を見たのと同じカンパニーの芝居。
あまり詳しくないのだが、ここの脚本を書いている人は「群像劇のプロ」なのだなと思う。
前回は一応ストーリーテラーのような役どころはあったものの、今回はそれすらもなく。
主人公を決めるのは、作品を見ている私、といった状態。

舞台はとある荒れ庭。
持ち主は亡くなり、娘は熱心に手入れしているものの技術が伴わない。
庭の住人(花やら置物やら小鳥やら)はそれぞれの命を、あるいは存在を生きている。

庭の最古参であり、若い花々の保護者のような、貫禄ある藤。
強がりで、そう、星の王子様にでてくる薔薇のような、薔薇。
フェミニンな男性の、百合、
針のつかいどころを探しながら針を温存している蜂。
未来への憧れでそわそわしているチューリップの球根2人。
庭の主が買ってきた呪いの人形?クンカクンカ。
退屈に殺されかけているアヒルの置物。
自由を求めて、かごから抜け出したインコ。
巣作りに勤勉で、インコを気にかける雀。
空気を読まない、自分の理想の背景を探し求める美貌のアゲハ。
これに庭の主の娘、「キミちゃん」と、その彼氏、小学校の同級生である庭師の男、女性庭師で全員だ。

庭の主がなくなったため、この庭はもうすぐ更地になる。
きみちゃんも引っ越していく。
花たちも、それぞれの生の終わりを見つめなくてはならない。

薔薇と百合は切られて、切り花となる。
一人の少女の心の支えとなるため、自分の命を少しでもながらえるため、少しでも長く咲こうとする薔薇。
大事な人生の節目を彩る花として、一瞬で満開になろうとする百合。
チューリップは「天国」についてふわふわ話すばかりで自らの生の行く末など見えていないかのよう。

置物たちは命の期限のない存在であるがゆえに自由で不自由。
もらわれていった先で突然人気者になったクンカクンカ。
引っ越し先に連れて行ってもらえるものの、同じ景色ばかりだと退屈するから、と置かれ方をコントロールしようとするアヒル。

花と置物の間に、羽あるものたちがいる。
もらわれていった者たちのその後を伝令しようとする、蜂とインコ。
あくまで「よそ者」として庭を愛し、庭を見つめている雀。
アゲハの世界においては他者は全て「背景」であり、「黒と●●色は××」という、自分の色との相性でしか他者を見ない。

全ての存在をつなぐのは、藤。
動くことも、切り花になる事も、永遠の時の生きる事もない、藤。
庭を作り上げた、きみちゃんの父。
彼が一番初めに植えた藤は、彼の死の時に一房だけ花をつけた。
庭の主と最も深いつながりを持つ藤。
きみちゃんは藤を守ろうと奔走するものの、あまりに深く根を張った藤はそう簡単に植え替えることなどできない。

きみちゃんを中心に、2人の男と女性庭師の心も絡み合う。
自己中できみちゃんの事を理解しているとはいいがたいけれど、2人の将来を彼なりに真面目に考えている様子の彼氏。
きみちゃんの事を理解してはいるけれど、ストーカーまで紙一重の視野の狭い愛情を向けている同級生で庭師の男。
どっちもやめとけ、まだ若いんだから、と言いたくなるが、きみちゃんは彼氏と生きていく覚悟があるようだ。
自分を変えて、押し殺して。
その覚悟を語る台詞はアゲハの唯我独尊な台詞とちょうど対になっている。

アゲハのように生きられる人は少ない。
彼女は空気を読まない。
自分が一番大事で、周りは背景だ。
自分に好意を寄せる蜂もバッサリふってしまう。
だけど、その時の台詞は「黒に黄色は合わない」なんだ。
「黄色って色はダメ」ではない。
自分が大好き、という彼女の軸は他者によって揺らぐことはない。
だから誰かを貶す必要がない。
それってとても強くて、美しい。

きみちゃんはこれから先、どう生きていくのかの答えはこの作品中で明言されていない。
そこまで含めて、「見る側が決める」んだと思う。


自由を求めたカゴ抜けインコ。
彼は飼い主のところに一度だけ戻ってみた。
そこには、自分となじ名前の新しいインコ。
仕事している人間ならこの痛みはすごくリアルだろう。
自分はもう必要ない。
自分は「自分」である必要のない存在だった。
そんな痛み。
けれど、この庭の花やアヒルはインコを必要としている。
彼は正確にはこの庭の一員ではない。
普段は夜は自分のねぐらに帰っていたようだし。
彼はどこにも属していない。
きっと、「属する」ことが怖くなってしまったのだろう。

庭が終わる時、インコは「動物園に行く」と決心する。
(冬をこのままの「カゴ抜けインコ」で過ごすことは厳しいという雀の言葉からして、これは生きるためのギリギリの選択)
インコがそれを告げる相手はアヒルのみ。
この二匹の交流は語られない部分が深い。
姿かたちは似ているのに、生物と置物で、客と庭の一員で。
全く違うインコとアヒルがお互いを肯定しあっているのが嬉しくて痛い。
相手への「肯定」は自分への黒い想いと裏返し。
アヒルは動けて終わりのある命がうらやましい。
インコは最後まで見届けられる永遠の存在が羨ましい。
けれど、その黒い想いは隠して、相手を肯定して、相手からの肯定を受け入れて、自分の明日を生きる。
痛みのある肯定を受け入れる姿は、私がインコを演じている中島多朗さんを見に行く理由だ。
ただ幸せなだけでない許しや肯定を、リアルなのに希望のある形で演じてくれる人だから。



一方、蜂は最後まで花々と寄り添う
蜂は藤を強引に過労とするきみちゃんの彼氏を刺して、(ミツバチなので一度刺したら死ぬ)息絶える。
最後は切り花となった薔薇のそばで。
薔薇は蜂を愛していたけれど、蜂はアゲハに夢中で、薔薇と蜂は恋中ではない。
でも一番強く結びついていたんだろうな。


話の最後、いよいよ藤が伐採される直前。
庭師の女性がきみちゃんに向き合う。
父を思い出さなくなっていくことがつらい、だから藤だけでも変えたくないと訴えるきみちゃんに、庭師はこういう。
「思い出せなくなることは忘れる事ではない」
これは、思い出さなくなる事で自分を責めないで、という台詞だ。
だけど同時に「どんなに忘れられない大事な人も思い出せなくなっていく、それは止められない」事でもあるんじゃないだろうか。
自分が大事な人を喪った時を思い出して、そう感じた。

藤は最後にに、きみちゃんを肯定する。
包み込む。
きみちゃんにそれがどれだけしみこむかはわからない。
不幸への道だとわかっていても彼氏と付き合い続けることをやめられないのかもしれない。

肯定される、許される事を受け入れるのは難しい。
自分を愛する、というベースがないと本当に難しい。
誰かの優しさを受け入れる事が自分を傷つけることもある。
「役割」の中で生きる事より、自分で生きる事の方がつらい時もある。

私は「傷つきながらも変わりたいと願い、さらに傷つきながらも肯定や赦しを受け入れる」存在から目が離せない。
花たちが自分の「生」に区切りをつけていく中で命の終わりがない自分と向き合ったアヒル。
自由を求めて、元の居場所を失って、自分の選んだ居場所もなくなって、自棄になりそうだけどアヒルや花たちとの交流を自分の芯にして生きていこうと足掻くインコ。
「崇高な目的のために命をなげうつ」事ができない苦しみ。
残される哀しさ。
そんな中でも、生きていく。
いくらでも拡大解釈できて、全ての人に響く、普遍的な痛みの話なんじゃないだろうか。


私はまだ「自分の死」は身近にない。
一方で、「残される苦しみ」は知っている。
だから、残される側に共鳴する。
私にとってこの話は「蜂とアヒルとインコが三者三様、庭の終わりと自分の生の形で向き合う話」だ。
パートナーとの関係がしんどい人にはきみちゃんが主役だろうし、これはもう見る人次第だし、私が5年後にこの話を見た時同じ感想になる事はないだろう。
まさに一期一会。

庭を守るために、庭ともに散った蜂。
庭にもらったものを胸に、生きるために足掻くことにしたインコ。
何もできないけれど、心の痛みに耐えて全てを受け入れ見守り続けるアヒル。


この話は「命の終わり」、「残された者の痛み」という誰にでも共鳴するテーマを、痛みが生々しくならない花や鳥に託して、自分の好きな角度から物語に浸らせてくれる。
死と向き合う事は、生の輪郭をなぞる事。
輪郭がわかったら、次は躊躇せず、ど真ん中に飛び込めるはず。
それが生命への讃歌になる。
同時に、輪郭をなぞっただけで知った気になってはならない。
いつか来る死、それに向き合うだけじゃ生きたことにならない。
「生に向きあう」という事をもう一度考えさせられる作品だった。
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お笑いメインに、芝居、宝塚と西へ東へ。

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