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2018-11

一番大事なものを守るということ@天は赤い河のほとり

まかぜくん見たさにリピート観劇!
久しぶりにどっぷり。
少女漫画と宝塚の相性の良さを再確認したわ。

この作品、原作はベルばら世代も親しんだぐらいの昭和レトロな少女漫画。
あの時代の少女漫画って基本「ラブコメ」な上、要求される知識水準が今どきの少女漫画と比べ物にならないぐらい高く、さらにヒロイン像が独特。

まず知識レベル。
現代で「ベルばらはまって世界史がフランス革命だけ成績爆上がり」なんて話が起きるのはよく聞く話。
この「赤い河~」だってそうよ。
古代ヒッタイト。
私はこの時点で相当危うい。
ツタンカーメンの時代の話、鉄がまだ普及したかしてないかぐらいの時期で、エジプトとヒッタイトがドンパチやってた時代。
まぁ運よく半年ほど前にテレビのエジプト女帝特集みたいなの見てたおかげでネフェルティティの事はそこそこ分かって、なんとかついていけたけど…



ラブコメ。
この時代の漫画家は作画力が高いため、デフォルメ絵でも誰が誰だか一目瞭然。
ちょこちょこ挟まるコメディタッチのシーンではデフォルメキャラに変わるのが当たり前。
当然、この作品も。
…「今絵がデフォルメになったぞ」ってすっごくよくわかるんですが。
芝居の色が変わる、流れてる空気が変わる。
それがすっごくわかりやすいの。


ヒロイン像。
ヒロインのユーリが逆ハーレム状態。
この「逆ハーレム」も、この時代の漫画は独特だ。
男性向けジャンルでのハーレム状態は基本「やれやれ系」などと揶揄される「何もしないけど、特に何か抜きんでるものもないけど愛される主人公」。
現代の少女漫画に多いのは「顔が一番かわいい女の子を差し置いてパーフェクト王子に愛される普通かそれ以下の頑張り屋のドジっ子ヒロイン」。
ユーリは違う。
戦場に立つ。
兵士に指示を出す。
命を懸けて戦う。
王に「王と同じ器の女」と認められる、戦いの女神。



宝塚では男役がメインだと思われがちだし、確かにファンは男役に多い。
だけど、ヒロインが「王と同じ器の女」であることってそれは女性向けのエンターテイメントにとって大事な事だと改めて思った。
そしてそういう作品はすごく少ない。
社会派を気取るのは私の性に合わないが、「専業主婦になりたい女子」が再び増加に転じて以降の作品には、ユーリのようなヒロインは出てこない。
けれど、「女子」でなくなった私たちにはユーリが必要だ。
いわゆる「女子」ではなく大人になった女性にとって、今の少女漫画の「実力じゃない『かわいさ』を持ち愛されるヒロイン」は憧れの対象にも感情移入の対象にもならない。
同時に男性向けジャンルの「何も抜きんでるもののない男に群がるワンオブゼムの女」もダメだ。
この時代の少女漫画は宝塚にとって、本当に貴重な財産となるだろう。
ちなみにヅカのオリジナル作品でこういうヒロインを一番上手く書けるのは大野先生!
私は昔から大野先生推しです。



さて、ここからは純粋に芝居の感想。
主人公の王子様、カイル・ムルシリはまかぜくん。
圧倒的な王子様力。
不敵な笑み、繊細な口説き方、ひざまずいた瞬間の美しさ、全てが王子様。
指先の形、手の平の角度、つま先の位置のわずかな違い。
そういうものがどれほど大事か。

皇太后が儀式のためにユーリを現代日本から召喚しちゃったので、現代では神隠し案件。
という説明をユーリの日本での彼氏と妹が説明してくれるシーンが冒頭にある。
ここでタブレットに掘られた文字を読みだすと一気にタイムトリップ。
このタブレットがキーアイテムなのよ。
で、シーンが古代に移ってタブレットを読みだすのは王子の幼馴染キックリ。
馬の世話と記録が担当、どういう分担?

ユーリは召喚されて早々に皇太后に追い回され、それを見つけた王子がユーリを助けるために一芝居うつ。
壁ドン!
…原作でも壁ドンしてるの?
王子はユーリが儀式のいけにえ用だとわかると、自分の屋敷に連れていく。
皇太后に渡したらユーリの喪が危ないうえ、儀式の目的は自分を呪うことだろうから。
この場面だけで王子サイド(軍隊としての部下、王子の個人的な腹心)がほぼ全員出てくるうえ、皇太后側の人間関係もだいたい説明されちゃう。
次は戦闘シーン。
ここでミタンニの黒太子の話にエジプト勢の紹介、ユーリ覚醒とまあ詰められるだけ要素が詰め込まれている。
とにかくここでユーリは黒太子に立ち向かい、国民の支持を受け、以降は「ユーリ・イシュタル」と戦いの女神の名を名乗るようになる。
この2シーンを理解しきれれば、後は萌えるだけなんだけどね。
お祭りの場面とか最高よ。
剣を持つユーリの勇ましさ、王子とエジプトのラムセス将軍の殺陣にもワクワク。
この二人、「お前は俺だ!」のランスロットと同じ組み合わせでねえ…
星組で大きくなった二人が宙組でまたちゃんばらしてるのよ。
もう親心発動するしかないでしょ。
(後半でもう一回闘うけど、そこもまたドラマティックで最高)

この「お祭り」がまたイイ。
屋台で売られてる蛇の丸焼きを見せられて慌てるユーリ、平気な顔して食べちゃう王子と弟。
この弟ザナンザがまた王子になつきまくってていい子なのよ。
桜木みなとくんが可愛い。
お祭りの前のシーンでも少女漫画らしく跳ねっ返りで剣の稽古に明け暮れるユーリとか、王の使用人の少年ティトとその姉妹とかわちゃわちゃ楽しい。
「日本での愛のしるしはハートマーク」なんてエピソードが出てきたり、わちゃわちゃシーンや単なるラブコメシーンに大事な萌え伏線があるので要注意。


一旦戦いは落ち着くのかと思いきや、王子の父である王が暗殺されてしまう。
もちろん皇太后の悪だくみなんだけど、嫌疑はカイル王子に。
王子は逃亡生活に入るわけだが、その時に必死にユーリを逃がす。
ここでザナンザ死亡、ラムセスが倒れてるユーリを拾ってエジプトへ。
これにもちゃんと意味があって、実はエジプトの皇太后ネフェルティティとヒッタイトの皇太后ナキアは通じていた。
ラムセスの婚約報告のふりしてネフェルティティの城に忍び込んで証拠ゲット!
ユーリここでも大暴れ。
証拠をもって王子のもとへ。
(ラムセスあっさりふられる)


この間にカイル王子の裁判でティトが身を挺してカイルを守るという燃えシーンが挟まる。
そこで明かされる、ティトも実は征服された民族の部族長の息子。
その民族はまだ普及していなかった製鉄の技術を持っている、「赤い河」=砂鉄の川を統べていた民族。
族長は監獄の中でまだ心は折れていない。
ティトはカイルに腕輪を託し、監獄に送られた王子の腕にティトの腕輪を発見した族長はカイルを問いただす。
そしてカイルへの協力を誓う。
そこからカイルの逆転劇!
じわじわと軍勢を集めていった。
その中にはかつてヒッタイトが征服したものも混ざっていた。


そして決戦前。
ずっと愛の告白をしては流されてきた王子がついに動く。
ハートを彫ったタブレット!
王子はユーリの背景にちゃんと敬意を示してるんだよね。
ちゃんと人として、パートナーとして、ユーリを尊重している。
きちんと向き合って、異世界を生きてきた少女の人生を受け入れたうえで愛している。
それを見てユーリは心を決める。
日本に帰れなくなるとしても王子と共に生きていく、と。

このシーンの萌えは本当に深い。
もうね、このハートの彫られたタブレットは商品化しちゃえばよかったのよ。
クッキーにして土産物ににしたらさそ稼げただろうにもったいない。

そして最終決戦。
ネフェルティティもナキアも敗れ、国は若い三人の王子(ヒッタイトのカイル、エジプトのラムセス、ミタンニの黒太子)が動かしていく。
ラストシーンでやっと王子はユーリにプロポーズ!
ひざまずいたポーズの美しさよ。
真正面から愛を叫ぶプロポーズ。
大団円。
ああ美しい。



この作品のすばらしさは悪役サイドにもちゃんと物語があるところ。
まずヒッタイトの皇太后ナキア。
若いころから宮殿の神官と心を通わせていたものの、彼は宦官。
滅亡した国の王族であった彼は子孫を残せぬようにされて神官になっていた。
ナキアは駆け落ちをあきらめ、この宮殿で修羅の道を生きることを決める。
生まれた王子は神官の血を引いたかのような金髪。
実際には宦官の子は有り得ないので、王の子なんだけれど…ナキアの執念だ。
そして王の暗殺、ナキアの子を王位につける計画を実行するも失敗。
ここでカイル王子が出した結論は、ナキアを追放するものの、同じエリアにナキアの息子と神官を送り込むこと。


ネフェルティティは弟の黒太子「マッティワザ」を心から愛していた。
この時代の結婚の形を考えた時、この「愛」はたぶん家族愛じゃない。
男女としての想いもきっと含まれていたんじゃないだろうか。
けれど、ミタンニは小国。
国のため、彼女は嫁いでいく。
黒太子にイヤリングを残して。
そのイヤリングはユーリの手によってネフェルティティのもとに戻る。
その時彼女は何を思ったのだろう。
すごく複雑な表情で、一言で言えるものじゃない。
きっと正解もない。
ただ言えることは、生きるために自分の一番大事な気持ちを失う、という普遍的な哀しみ。
今の私たちにもつながる、哀しみ。
そのイヤリングの中のガラス玉はネフェルティティの像の目に使われる。
その像を作るのは、失脚したネフェルティティにまだ付き従う彫刻家トトメス。
露悪的にトトメスを追い出そうとするネフェルティティにもひるまないトトメス。
これは恋愛関係じゃないけど、きっとこれからの彼女の「一番大事な感情」になるものだと思う。
このトトメスを演じた松風輝君って子、今まで注目したことなかったけど、この子の芝居が素晴らしい。
複雑な感情を、正解のない想いを、ここまで演じてくれるとはね。
イケメン設定の役じゃない、ハッキリ言えば脇役で、こういう輝き方してくれる子がいると本当に心強い。


カイルやユーリのような、真っすぐに愛して結ばれるカップルも美しい。
萌える。
だけど、ネフェルティティとトトメスの失敗することでしか、失うことでしか見つけられなかった関係も、心に響いた。
ネフェルティティのさやと君も素晴らしかったからこその熱演。

この作品の中で、カイルもユーリも「一番大事な物」を必死に選んで守った。
それを「守れなかった」はずの黒太子もネフェルティティもナキアも、失敗したからこそずっとそばにあったものを見ることができた。
幸せの形が全員違って、でもそれぞれがラストできちんと幸せをつかんでいて、それを宙組全員で魅せてくれることが本当に素晴らしかった。
作中で死んでしまったキャラが見守るようなラストシーンでも、ちゃんと目線の使い方や表情で想いの違いが判る。
大人数での芝居が多かった宙組だからこそ、こういう台詞外での魅せ方を学んでいるのかもしれない。


器の大きな王子様と、王子と対等にやり合う跳ねっ返りお姫様と、魅力的なライバルと血の通った悪役。
全部そろった作品は本当何度見ても毎回新しい輝きがあって素晴らしい。
終わっちゃうのが本当に残念。
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お笑いメインに、芝居、宝塚と西へ東へ。

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