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2019-09

わたしはそこにいたいから@劇団YAMINABE「表と表」

劇団YAMINABEさんの公演、「表と表」。
つぶれかけた蕎麦屋(メイン収入は居酒屋営業?)を舞台に、夫婦の破壊と再生の物語。
前回の「疑惑」が割と群像劇だったのに比べ、今回は夫婦がはっきりと主役。

まず最初に登場人物紹介的な場面。
ザ・いい人な気弱で馬鹿正直で蕎麦がまずい旦那がスモーキードライの高野智和さん。
その妻で気の強そうな美女が一木花蓮さん演じる奈央。
ナースを目指して学費をためるべくバイトに励むバイトの奈津が宮崎真緒さん。
主役の気弱な旦那、ユウジの親友二人、モテそうな方が沼倉計太さん演じる中谷で、モテなそうな方が吉井元さん演じる望月。
妻、奈津の兄が三須暁さん演じる翔太。
常連客の謎のジジイ、源さんはさかもとしろうさん。

で、その後借金取りの兄貴の中島多朗さんとその舎弟のおしんこきゅうの湯浅さん登場。
妻がつるんでるもう一人の美女、あやせいかさん演じる千尋は登場シーンからして怪しい。

さて、主役の夫婦はどうもすれ違っている模様。
旦那は妻にベタぼれだけど、言うべきところでガツンと言えないキャラクター。
妻は妻で奔放に飲み歩いている様子。
借金取りは兄の翔太が追い返してくれたものの、二人きりになると会話がかみ合ってない。
そんなぎくしゃくした空気の中、妻の奈央が借金を返すためのとんでもない提案をしてくる。

「不倫しなよ…私が訴えるから!」

美人局の男女逆転バージョン。
ユウジは妻にベタぼれ、不倫なんかしたくないし、でも妻にベタぼれだからこそ妻に逆らえない。
明らかに挙動不審になり、親友たちにも怪しまれる始末。

一方、奈央の怪しげな交友関係はさらに増える。
探偵?ジャーナリスト崩れ?なホンマユータさん演じる木村。
コイツ、明らかに奈央に気がある。
でも奈央はそれに応じる気配はない、それなのにどこかただならぬ空気。

とにかくユウジは不倫をしなければならない。
だから中谷に合コンを頼む。
そして自分の店で合コン開始。
いや、証拠集めとかは楽だろうけども。
繰り返すが、ここはつぶれかけの蕎麦屋。
女子ウケはしなさそうだが…
やってきたのは中谷の同僚、金沢藍さん演じる久美。
久美の飲み友達の不思議ちゃん、岡田果実さん演じる明菜。
ユウジの本命になる徳丸舞香さん演じる順子。


不思議ちゃんの明菜と、妙にハイテンションな望月、意味不明な意気投合。
ここら辺からコメディのエンジンかかってくる。
合コン中、カウンターで見守る奈央。
そこに入ってくる翔太、必死にごまかす奈央。
この翔太、どこまでわかってるかわからない。
初登場の借金取りを追い返すシーンからそうで、つかみどころがなくてふわふわしてる。
だけど、転んだ振りして相手の急所を突くようなそういう行動をする人なのよ。
本当はすごくすごくキレ者なんじゃないかな、と感じさせる。
最後までふわふわのままなんだけどね。


そして合コンやってる合間合間に出てくる借金取り二人。
神出鬼没の源さん。
コヤツらが絶妙に話を引っ掻き回してくれる。
で、合コン後は木村ときな臭いシーンがあったり、奈央とユウジの深刻なのにコメディなシーンがあったり。
妻に女の口説き方を教わる夫、ってシュールですらない何か。

合間合間に借金取りは仕事する。
とはいえビシっと決められない舎弟、セカンドバッグの小銭を回収するだけでも大わらわ。
源さんもろくでもないことしつつ、でもこの店の蕎麦を愛してることをアピールするために借金取りと対決する。
源さんが格闘技経験者だと?
どんなドラマがあるんだ、このジジイ。


そうこうしているうちに時は流れ、ユウジは心の中に重たいものを抱えながら、順子とのデートに臨む。
だけど、最後の最後でワルになれないんだ。
順子の語る過去の恋愛話、既婚男に騙された話を聞いてるうちに、自分の計画に順子を巻き込めなくなる。
で、順子を突き放して自己嫌悪。
順子はユウジの計画を知らないから本気で傷ついて、ここで久美たち登場。

中谷はずっと行動のおかしいユウジが何も話してくれないことに、ついにキレる。
そして明かされる不倫慰謝料計画。
どう考えてもめちゃくちゃな計画。
ここにきて第三者の冷静な意見が入って、ようやくこの計画はちゃんと頓挫する。

さて、不倫しないとなっても借金問題は解決してない。
ここで借金取りコンビ再び暗躍。
冒頭の怪しげな女、千尋も何やら再登場。
話がこじれにこじれて、どん底になった時、やっと奈央の真意が見えてくる。
本当はユウジを愛していると。
以前に流産をしてしまった時から、ユウジのやさしさが痛かった。
慰謝料で借金を返すには夫婦が再構築では額が足りない、離婚前提の計画だった。
糸を引いていたのは怪しい女、千尋。
それを聞いてユウジは奈央を赦す。
抱き合う2人。

夫婦の誤解は解けた。
でも借金問題は変わらない。
タイミングよく表れた木村の情報を得て、中谷や久美たち合コンメンバーと合わせて一芝居うつことに。
ここからは怒涛のコメディ展開。
ラスボスの白石将吾さんが出てくるまでは。

再び合コンメンバーで呑みつつ、ユウジの浮気の話を千尋に聞かせて計画成功と思わせる。
協力してくれないんじゃないかと思われた順子も協力してくれて、でもまぁ望月中心に芝居はポンコツ。
そのどうにもポンコツな芝居に乗る千尋。
借金取りコンビも彼らの仕事をして、さて、大団円となりそうな鯛民で現れるラスボス、千尋の旦那。

ナイフ持ったラスボス、人質とられて絶体絶命。
そこに現れる源さん!
格闘技で磨いた技で形勢逆転!
そしてわちゃわちゃと人物が増えてきて、ほぼ全員揃ったところでユウジが「店を手放して借金を返す」と宣言する。
ラスボスからお金をせしめることだってできるのに、それは被害者に返して、自分の借金は店を売って返す、と。
ここで借金取りの兄貴が「馬鹿なヤツだ」って言うのよ。
たった一言なんだけど、全てを収束させる大事な一言。

どこまでも夫を見捨てない千尋、憑き物が落ちたラスボス。
本当は中谷たちの芝居が芝居だってわかってた。
だけど、これ以上夫が過ちを重ねないためにその芝居に騙されたふりをした。
ここで、もう一組の夫婦が破壊と再生をする。

そして後日、エピローグ。
借金取りコンビが店を買い取り、ユウジと奈央が店に立つ。
奈央の背中には赤ちゃん!
登場人物みんながこの蕎麦屋をたまり場にしている。
ここに、一つの「居場所」ができている。

これは夫婦の再生の物語。
同時に、「居場所」を失った人々の再生の物語。

やっと向き合うことのできたユウジと奈央、(店にはいないが)千尋と旦那。
この事件を通して店内での地位が上がり、翔太と飲み友達になっている源さん。
いつの間にか久美や明菜も常連で、中谷や望月もここにいる。
夢をかなえて、真っ先にこの店に報告にくる奈津。
完全にリラックスしてる借金取りコンビ。

これはユウジと奈央にとってだけではない、全員のハッピーエンド。




さて、個々の役語り。
この話において、このご都合主義が服を着て歩いてるような源さんは重要だ。
源さんが力技でハッピーエンドにねじ伏せていくんだ。

本当は、私は源さんは「店をユウジに託したユウジ父」の親友だと思ってる。
そう思わせられるだけの温かい眼差しをするんだもの。
ユウジも、奈央も、奈津も、源さんは我が子のように思ってるんじゃないかと。
クソジジイだけど、ここ一番で店のために体を張ってくれるのは、だからじゃないかと。
本当に言動はクズだけど、奥底にある温かさ。
これを表現できるさかもとしろうさんはすごいなぁと思う。


そしてもう一つ、めちゃくちゃ難しいだろう役。
バイトの奈津。
この奈津、ユウジにほのかな恋心はありそうなんだよね。
飲み歩く奈央にいい顔してないし。
だけど絶対それを表に出さない。
それは奈央の事も好きで、ユウジと奈央の夫婦が好きで、しかももしユウジが振り向いてくれても不倫するユウジは奈津の愛するユウジじゃないから。
告白しようが告白されようが絶対報われない迷宮の恋。
その恋を表に出してはいけない、でも匂わせないと奈津の行動のつじつまが合わない。
ギリギリのラインを上手く突いていて、少女漫画的トキメキまで味わえた。




ここからは私の妄想。
借金取りコンビ。
湯浅さんは安定の「ゴツい見た目に合わず兄貴になつく子犬」、兄貴の方はどう見ても役に立ってない舎弟をそれでも連れ歩く。
2人とも「借金取り」なんて本来向いてないひとなんじゃなかろうか。
だからこそ、ラストシーンの蕎麦屋でメインキャストみんなで呑んでるシーンが嬉しい。
アウトローな世界で生きて、居場所のなかった2人がやっと居場所に辿り着いた。
ラストシーン、多朗さん演じる兄貴の表情の柔らかさ。
この人、本当にいい芝居をするわ。
徹頭徹尾キャラが変わらないのに、何か変化を感じる湯浅さんの舎弟も良し。


ユウジは一見気弱で、飲み歩く妻にもビシっと言えない男。
女の口説き方の一つもわからない朴念仁。
だけど、愛する妻の過ちまで全て受け入れた男。
だからみんなの居場所になれるんだ。
蕎麦がどんなにまずくとも、ユウジの店には人が集まる。
ユウジの周りには、温かいい場所ができる。
こういう一見ヒーローじゃないのに求心力のある人物像を演じきれる、高野さんの「人たらし力」は素晴らしい。

2人の「妻」、奈央と千尋。
どっちも一度は夫の愛し方を間違えた。
奈央は優しさから逃げながら、優しさに甘えて試し行為をしながら、夫を試す自分にさらに傷ついた。
千尋は変わりゆく夫におびえながらそれでも夫を愛し信じていたのに、その愛も信頼も言葉にできずにいた。
包み込まれる妻、奈央。
包み込む妻、千尋。
2人の対比が面白い。



この作品、キャッチコピーに「不倫」という言葉が出ているけど、本当のテーマは「居場所」だと私は思う。
全員が居場所を得られる結末で良かった。
不倫というのもキャッチーで現代的で目を引くテーマだけど、「居場所」もしくは「コミュニティ」っていうのも社会的に面白いテーマ。
今回はやや社会派っぽくて、これもこれで良かったわ。
次回ももう決まってるらしく、かなり楽しみ。

終演後には借金取りコンビの写真ゲット。
IMG_0415.jpg
まずはビッグスマイル!

次は役の感じで。
IMG_0416.jpg
一瞬で化けてくれるあたり、さすがです。
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